研究

研究紹介

About Research
卒業論文

乳牛への飼料米給与が飼料摂取量、乳生産および牛乳の脂肪酸組成と“おいしさ”に及ぼす影響

掲載日:2018.07.12

農食環境学群 循環農学類 家畜栄養学研究室
 (2016年3月卒業)外岡文佳・小泉朋美
(2017年3月卒業)佐藤加奈・西原康陽・舘 和音・池澤里奈
(2018年3月卒業)奥山 尚・小野寺ゆきこ・池田 栞・津田洸樹
研究代表者(指導者)中辻浩喜

背景および目的

 近年、わが国では国産濃厚飼料としての飼料米が注目されています。酪農家としては、海外からの輸入が大半を占める濃厚飼料が、一部でも国内で調達できるようになれば安心感につながるとともに、国産飼料の利用拡大は消費者の理解や信頼も得られやすいでしょう。一方、稲作農家としても、主食米消費量の減少による不作付地を有効活用でき、来るべき増産に備えて水田を維持することができるというメリットがあります。
 また、飼料米の給与により血中悪玉コレステロールを低下させる働きがあるといわれている不飽和脂肪酸のオレイン酸(C18:1)の牛乳中含量が増加したとの事例報告もあり、人の健康への効果に関する付加価値を高める可能性もあります。
 しかし、これまでの泌乳牛に対する飼料米給与に関する研究では、都府県にみられる濃厚飼料割合が高い条件下での報告が多く[飼料米の生産・給与技術マニュアル(2016年版)]、北海道のような粗飼料給与割合が高い条件下で、かつ牛乳の風味や成分など、牛乳の“おいしさ”にかかわる項目も含めて総合的に研究された例はありません。
 そこで本研究では、粗飼料主体TMRへの飼料米の混合給与が、乳牛の飼料摂取量、乳量、乳成分、牛乳の脂肪酸組成(泌乳試験)と官能評価(官能試験)に及ぼす影響を3年間(2015~2017年度)にわたり検討しました。

試験方法

1)泌乳試験
(1)供試牛
酪農学園フィールド教育研究センター(FEDREC)酪農生産ステーション自動搾乳システム牛舎のホルスタイン種泌乳牛群(18~22頭)
(2)試験処理
コーンサイレージ・グラスサレージ主体TMR(粗飼料:濃厚飼料=60:40、乾物比)の濃厚飼料源として圧ペンコーン(以下、コーン)を混合するTMR(対照区)とコーンを破砕玄米(1.5㎜)(2015、16年度)あるいは籾米ソフトグレインサイレージ(以下、籾米SGS)(2017年度)で置き換えたTMR(試験区)(表1)
(3)試験方法
3期反転法(Ⅰ期:試験区 → Ⅱ期:対照区 → Ⅲ期:試験区)
(4)試験期間
51日間[1期17日間(予備期10日間、本期5日間)×3期]
 2015年度:11月1日~12月21日
 2016年度:8月1日~9月26日
 2017年度:7月1日~8月20日
(5)測定項目
飼料摂取量、乳量、乳成分
行動調査[10分毎24時間連続で供試牛の行動形(採食、反芻、休息その他)を記録]
牛乳の脂肪酸組成

2)官能試験
(1)実施日
 2015年度:11月16日(Ⅰ期)と12月17日(Ⅲ期):2回
 2016年度:10月5日(Ⅲ期終了後飼料米給与を継続):1回
 2017年度:7月18日(Ⅰ期)と10月17日(Ⅲ期):2回
(2)供試乳
FEDREC酪農生産ステーション自動搾乳システム牛舎生産乳(飼料米乳:破砕玄米乳と籾米SGS乳)とフリーストール牛舎生産乳(コーン乳)、および市販乳。生乳をそれぞれバルククーラーから採取し、63℃30分低温保持殺菌。市販乳は同条件で殺菌されたもの。
(3)パネラー
本学学生・教職員 各回100~160名
(4)試験方法
市販乳を基準(0)とし、飼料米乳とコーン乳(無記名)について、以下の評価基準に基づき、-3から+3まで1刻みの7段階で評価。
①見た目(色)(白→黄)、②香り(飲む前)(悪→良)、③口当たり(悪→良)、④後味(悪→良)、⑤甘味(弱→強)、⑥コク/濃厚感(弱→強)、⑦あっさり/すっきり/さっぱり感(弱→強)、⑧総合評価(悪→良)

結果

1)泌乳試験
(1)飼料摂取量は、各年度とも両区ほぼ同様でしたが、乳量はコーンにくらべ破砕玄米と籾米SGSが高い傾向にありました(表2)。
(2)破砕玄米給与時の咀嚼時間(採食+反芻)が籾米SGSとコーン給与時にくらべ短くなる傾向にあり、反芻時間は500分以下となりましたが(図1)、乳成分、特に乳脂率の低下などはみられませんでした(表2)。
(3)牛乳中のオレイン酸(C18:1)含量は、破砕玄米あるいは籾米SGSのような飼料米の加工・調製方法の違いによる差はなく、また、コーン乳と市販乳との差もみられませんでした(表3)。

2)官能試験(表4、図2)
(1)破砕玄米乳と籾米SGS乳はコーン乳とともに、見た目は市販乳にくらべやや黄色と評価されました。
(2)破砕玄米乳と籾米SGS乳ともに、香り、口当たり、後味は市販乳よりわずかに良いと評価され、コーン乳との差も小さなものでした。
(3)破砕玄米乳と籾米SGS乳ともに、甘味、コク/濃厚感、あっさり/すっきり/さっぱり感は市販乳よりわずかに強く、コーン乳との差も小さなものでした。
(4)飼料米乳は、飼料米の加工・調製方法の違いにかかわらず、コーン乳とともに、総合評価においても市販乳に劣るものではありませんでした。

まとめ
 以上のことから、粗飼料割合が60%程度のTMRにおいて、破砕玄米あるいは籾米SGSを圧ペンコーンの代替として5㎏程度(飼料乾物中含量18%)までの置き換えは、飼料摂取量、乳生産の面から可能と考えられました。
 また、飼料米を給与して生産された牛乳は、破砕玄米あるいは籾米SGSといった、米の加工・調製方法の違いにかかわらず、圧ペンコーンを給与して生産された牛乳や市販乳の“おいしさ”と遜色ないと評価されました。

※本研究は北海道農政部からの「委託研究」として実施されたものです。

表1.TMRの飼料構成および成分含量

乳牛への飼料米給与が飼料摂取量、乳生産および牛乳の脂肪酸組成と“おいしさ”に及ぼす影響

表2.飼料摂取量、乳量および乳成分

乳牛への飼料米給与が飼料摂取量、乳生産および牛乳の脂肪酸組成と“おいしさ”に及ぼす影響

図1.1日の採食、反芻、休息等の時間

乳牛への飼料米給与が飼料摂取量、乳生産および牛乳の脂肪酸組成と“おいしさ”に及ぼす影響

表3.牛乳脂肪の脂肪酸組成

乳牛への飼料米給与が飼料摂取量、乳生産および牛乳の脂肪酸組成と“おいしさ”に及ぼす影響

表4.官能試験での評価点

乳牛への飼料米給与が飼料摂取量、乳生産および牛乳の脂肪酸組成と“おいしさ”に及ぼす影響

図2.官能試験での評価点

乳牛への飼料米給与が飼料摂取量、乳生産および牛乳の脂肪酸組成と“おいしさ”に及ぼす影響

※ ダウンロードにはアンケートへのご回答が必要です。