消毒薬の種類
掲載日:2019.02.18
酪農場における消毒には、牛の病気の予防をはじめ、安全な生乳の生産、環境汚染の防止、安全で清潔な労働環境の確保という四つの目的があります。消毒薬の効果を最大限高めるためには、①濃度②温度③時間④汚れ(有機物)⑤pH⑥作業の徹底―を意識して使用しなければなりません。
酪農場で多く使用される消毒薬は7種類に分類され、殺菌作用や特徴がそれぞれ異なるため、使用するものや場所、目的に応じて適切に選択する必要があります。
1.逆性石けん
特徴 ⇒ 皮膚粘膜に対して刺激が少ない。金属や布に対して腐食性がほとんどない。価格が安い。
欠点 ⇒ 耐性菌が存在する。芽胞菌には効果がない。有機物に吸着されやすい。
用途 ⇒ 畜舎、器具類、乳房や乳頭など
2.両性石けん
特徴 ⇒ 皮膚粘膜に対して刺激が少ない。金属や布に対して腐食性がほとんどない。長時間作用させることで結核菌に対して殺菌力を示す。殺菌力はpH8~9付近で最大となる。価格が安い。
欠点 ⇒ 石けんまたはタンパクの共存によって殺菌力が低下する。
用途 ⇒ 畜舎、器具類
3.塩素系
特徴 ⇒ 各種微生物・各種ウイルスに対して効果的。耐性菌ができない。価格が安い。
欠点 ⇒ 金属や布に対して強い腐食性があり、酸性にすると有毒なガスが発生する。有機物によって分解されやすく、自然の状態(日光など)でも分解し、殺菌力が低下する。
用途 ⇒ 踏込消毒槽
4.ヨウ素系
特徴 ⇒ 全ての細菌に対して同程度の濃度で殺菌でき、安定した効果が得られる。特に結核菌に対して有効。殺菌力は酸性で強く、アルカリ性で弱くなる。
欠点 ⇒ 有機物によって殺菌力が低下する。ステンレスを除く一般の金属に対して腐食性がある。皮膚粘膜、布類を着色する。
用途 ⇒ 乳頭ディッピング
5.アルデヒド系
特徴 ⇒ 各微生物に対する殺菌効果、各ウイルスに対する不活化効果を持つ。耐性菌ができないため、他の消毒薬とローテーションで使用することで耐性菌対策が可能。
欠点 ⇒ 皮膚や粘膜に対する刺激が強い。刺激臭が強いため取り扱いには注意が必要。酸化剤や空気中の酸素によって殺菌力をほとんど失う。
用途 ⇒ 畜舎
6.オルソ系
特徴 ⇒ コクシジウムに対して有効。特有の色と強い臭いがある。
欠点 ⇒ 酸に弱い。紫外線による分解が早い。水の硬度による分離沈殿がある。
用途 ⇒ コクシジウムのオーシスト消毒薬
7.消石灰
特徴 ⇒ カビが発生しにくい。金属に塗布してもさびにくい。価格が安い。
欠点 ⇒ アルカリによって皮膚や粘膜が侵されるため、直接触れたり、目に入らないよう注意が必要。吸湿性が高いため、保管の際は防湿、防水に注意する。
用途 ⇒ 畜舎、農場出入口
踏込消毒槽に入る前には、長靴に付いた泥や糞をブラシで十分に落としましょう。消毒薬が汚れたらこまめに交換することも重要です。塩素系消毒薬を使用する場合は、日光が当たったり雨水が入らない場所に消毒槽を置くか、消毒槽に蓋を設置することで効果を長持ちさせることができます。
複数の消毒薬を混ぜると、十分な効果が得られないだけでなく有毒なガスが発生することがあります。また、直接触れると危険な消毒薬もあるので、獣医師や説明書の指示に従い、使用の際は手袋やマスクをつけるなど取扱には十分注意しましょう。