質問コーナー

質問コーナー

Q&A

牛の飼料成分で使うTDNは人間におけるカロリーとは違うものなのですか?

掲載日:2020.06.15

Q

牛の飼料成分で使うTDNは、いわゆる人間におけるカロリーとは違うものなのですか。

A

カロリー(cal)やキロカロリー(kcal)は人間が摂取する食品に含まれる「エネルギー」を表す単位です。一方、TDN(Total Digestible Nutrients)は日本語では「可消化養分総量」といい、家畜の飼料中に含まれる、これも「エネルギー」を評価する指標の一つです。すなわち、「エネルギー」を表すという点では、TDNも「カロリー」も一緒です。ただ違うのは、TDNは重さの単位であるグラム(g)やキログラム(kg)で表されます。したがって、人間の食品中のエネルギー価は、“食品100g当りkcal”と表示されるのに対し、家畜の飼料では“飼料中TDN含量(%)”で表されます。
TDNは以下の式で求められます。

TDN=可消化粗タンパク質+2.25×可消化粗脂肪+可消化粗繊維+可消化可溶性無窒素物

この評価法は、飼料中の栄養成分とその消化率から、消化、吸収される養分(可消化養分)を求め、その総和として飼料のエネルギー価を推定しようとするものです。なお、可消化粗脂肪に係数2.25を乗じるのは、脂肪(9kcal/g)は炭水化物(粗繊維+可溶無窒素物)(4kcal/g)の2.25倍のエネルギーをもつことに基づいています。また、タンパク質(5kcal/g)のもつエネルギーは炭水化物より大きいですが、尿中に排泄される尿素などのタンパク質代謝産物としてのエネルギー損失があることを考慮して、炭水化物と同等のエネルギー価(係数1)としてしています。

なお、TDNは濃厚飼料にくらべて粗飼料のエネルギー価が過大評価されるなど、エネルギー評価指標として精密性に欠けるなどの指摘もあり、近年では飼料エネルギーについても食品と同様に、エネルギーの単位[カロリー(cal)またはジュール(J)]で直接表示することが世界的に広まっています。日本でも同様であり、飼料のエネルギー価として、飼料のもつ化学エネルギー(燃焼熱)から糞に排泄されるエネルギーを差し引いた可消化エネルギー(Digestible Energy:DE)や、DEからさらに尿やメタンとして排泄されるエネルギーを差し引いた代謝エネルギー(Metabolizable Energy:ME)などが用いられています。しかし、わが国の酪農現場ではいまだTDNを利用するケースが多いことから、日本標準飼料成分表(2009年版)では、TDNとDEおよびMEの換算のため、以下の式が提示されています。

DE(Mcal/kg)=4.41×TDN(%)/100
ME(Mcal/kg)=-0.330+0.958×DE(Mcal/kg)


【回答者】
酪農学園大学 農食環境学群 循環農学類
教授 中辻 浩喜