質問コーナー

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Q&A

サイレージの可溶性炭水化物(WSC)は糖質と同じ意味ですか?

掲載日:2020.05.15

Q

一般にサイレージ原料の糖は可溶性炭水化物(WSC)として表されますが、可溶性炭水化物は、糖質と同じ意味と捉えても差支えないのでしょうか。
サイレージの原理について、もう少し詳しく教えて解説していただきたいです。

A

まず、可溶性炭水化物について説明いたします。
炭水化物は栄養素の一つとして表現されますが、約50年前から糖質とも表現されています。
食品関係では一般的に炭水化物から繊維を除いたものを糖質として称されていますが、飼料としては糖質と炭水化物は全く同じものとして扱っています。
糖質は単糖類、少糖類、多糖類に分類されます。
可溶性炭水化物は、サイレージに関する特有の表現です。
これは分析上からの表現法です。
可溶性炭水化物とは、水に可溶な炭水化物(Water Soluble Carbohydrate)であり、単糖類(グルコース等:糖質の最小単位)、少糖類(単糖が2~10個結合)が相当します。
なお、多糖類は、単糖類が数百~数千個の単位で結合したもので、でんぷん、セルロース(繊維)などが相当します。

良質サイレージ調製の基本は、①好気性微生物の増殖を抑制する②有害な嫌気性菌(酪酸菌)による変敗を抑制する―ことにあります。
①はサイロの早期密閉、②はサイレージのpHを低くすることで目的を達することができます。
サイレージの低pH化の一方法として、乳酸発酵の促進(乳酸の生成)が挙げられます。
乳酸菌は、糖を乳酸に変換に変換します。
この現象を乳酸発酵と称し、乳酸に変換されやすい易発酵性の糖をWSCとして分析し、表現しています。
つまり、WSC含量が高い材料ほど、乳酸発酵が促進し、良質サイレージが調製しやすくなります。


【回答者】
酪農学園大学
名誉教授 野 英二