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未来の酪農家

未来の酪農家紹介「石渡牧場(静岡県三島市)石渡 幸征さん」

掲載日:2023.03.30

酪農学園大学 農食環境学群 循環農学類 4年
家畜管理・行動学研究室  石渡いしわた 幸征ゆきまさ

 

酪農学園大学入学のきっかけ

私の実家は酪農業を営んでいます。私の住んでいる地域では酪農家が珍しかったため、幼いころから将来は酪農家になると決めていました。高校も地元の農業高校に進学し、酪農についてひたすらに学んできたと思っていたので、高校を卒業したらそのまま酪農家になるつもりでいました。しかし、両親と担任の先生の強い勧めがあり大学に進学することを決めました。
高校2年生も終盤というところまで大学進学を考えていなかった私は、大学に入るための勉強も下調べもしてこなかったので、「とりあえず酪農を専攻できるところを探そう」といった軽い気持ちで大学を探し始めました。探し始めると“酪農”という文字を見つけられたのは酪農学園大学だけで、「これはもうここに入るしかない」と入学を決意しました。

在学中に力を入れたこと

在学中に力を入れたことは勉強です。高校までは“酪農家の息子”という環境に甘んじて、酪農に関することを受動的に学んできました。しかし「せっかく親に学費を出してもらって北海道にまで来たのにそれではだめだ」と思い、興味のあることに関しては酪農に関係なく履修してみるようにしました。履修内容は理系・文系、環境系や食品系問わず、今までちっとも触れたことのなかった分野に挑戦してみたりもしました。また、「座って話を聞くだけでは学んだことが実際の現場でどう役に立つのか、本当に正しいのかがわからない」と思い、実践酪農学実習という半年間の実習を2回できるコースも履修し、十勝と道東という気候も飼養管理方法も違う場所でそれぞれ実習をさせていただきました。
3年生になってからは家畜管理・行動学研究室に所属し、全国の卒業生の方々の牧場を見て回る機会もあり、それぞれの地理的条件や経営者の考え方が表れた飼養管理を学ぶことができ、酪農の多様性を実感させられました。
この4年間で、高校生までの自分よりも新しいことについて学ぶ姿勢が身についたと感じます。この姿勢は今後酪農をやっていくうえで必要不可欠なものになると思うので、とても有意義な大学生活を送ることができたと感じています。

※実践酪農学実習
2年次前期(実践酪農学実習Ⅰ)と3年次後期(実践酪農学実習Ⅱ)に、学外の酪農家のもとで数カ月間の実習を行う実践的な授業。循環農学類酪農学コースのサブコースに位置づけられている。

卒業論文の概要

酪農経営は日々牛に働きかけている情報(インプットデータ)と、牛から得られる情報(アウトプットデータ)を照らし合わせて改善を進めていきます。そこで、毎日得られるアウトプットデータの中でも、牛の生理状態を反映する生乳の中の特に酪農場全体の情報が集まっているバルク乳の成分と、インプットデータとして、飼養管理の中の特に給与飼料について調べ、これらの関連性を検討しました。

※バルク乳
搾乳してから集乳されるまでの間、バルククーラー(タンク)で冷蔵・保管されている生乳のこと。バルククーラーは酪農場(搾乳施設)ごとに設置されているため、バルク乳の成分を検査することで、その酪農場の乳質の傾向を把握することができる。

牧場の概要

所  在  地:静岡県三島市
経営面積:採草地2.7 ha、飼料用(デントコーンなど)1ha
飼養頭数:ホルスタイン種 経産牛23頭、未経産牛20頭
出荷乳量:186t/年
牛  舎:つなぎ飼い
搾乳方式:パイプライン
従  業  員:5名(家族経営)

牧場の歴史、特長、取り組みなど

50年ほど前に祖父が5頭程度から酪農をはじめ、現在は父が主体となって経営を行っています。祖父が建てた牛舎は河川工事のため移転を余儀なくされ、現在の牛舎は2003年に建てたものです。新牛舎への移転の際には、悪臭や虫害などの懸念から建設予定地近隣住民の反対運動があり、予定より1年遅れての着工になるなどトラブルもありました。こうした経験を踏まえて、畜舎内外の衛生管理を徹底し、周辺への環境に配慮した飼養管理を心がけています。

就農後の目標

就農後の目標として現在考えているのは、粗飼料自給率の向上です。北海道の酪農で印象的だったのは、粗飼料自給率が高く、牛が存分に粗飼料を食べているということです。北海道は畑も広く、本州で同じように畑を確保するのは難しいことですが、全国の酪農家さんを訪問してみると、耕畜連携や副産物の利用などさまざまに工夫をして粗飼料を確保していました。簡単にはいかないと思いますが、今まで学んだことを生かして輸入に頼らない粗飼料を確保し、最終的には粗飼料を飽食させたいと思います。
ほかにも解決しなければならない課題は多々あり、そう簡単に解決できないこともあると思います。しかし「常に新しいことを学び、試行錯誤しながら実践する」という工程を楽しみながら仕事ができたらいいなと思います。

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対頭式の牛舎

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手作りの育成舎

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牛体をきれいに保つように心がけている