ジャーナル・アイ

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未来の酪農家

未来の酪農家紹介「ベイリッチランドファーム(北海道美瑛町)浦 十夢さん」

掲載日:2023.03.15

酪農学園大学 農食環境学群 循環農学類 4年
家畜管理・行動学研究室  うら 十夢とむ

 

酪農学園大学入学のきっかけ

酪農学園大学入学の背景には、兄のカナダ留学と、弟の削蹄師を志す意思が影響しています。兄は、トップブリーダーのノウハウを身に付けるためカナダ留学を経験し、酪農経営者への道を歩み始めています。弟は、高校在学中に削蹄師を志し、日々削蹄の勉強に力を注いでいます。兄は乳牛の改良と酪農経営のプロとなり、弟は削蹄のプロとなる。後に兄弟三人で酪農を営むことになれば、僕がするべきことは何なのか―この答えを見つけるためには、全国各地から学生が集う酪農学園大学で酪農を一から学ぶ必要があると思い、入学を決めました。

在学中に力を入れたこと

私は、大きく二つのことに力を注ぎました。

一つ目は部活動です。「学生は、学業を優先すべきである」という父の教えの元、学業にも励みながら、並行して酪農学園大学柔道部の再建に力を注ぎました。柔道部再建を目指したきっかけは、2020年1月に新型コロナウイルス感染症が国内で初めて確認されたことで、当時20人を超えた部員も稽古の参加者は3人程度にまで減少してしまい、部費は底をつき、廃部になるのではないかと感じたことです。その年の4月に3年生に進級した私は、主将・会計・主務という役職すべてを任せていただき、部の再建を目指しました。資金繰りをはじめ、SNSの活用や卒業生への挨拶回り、部のイベントづくりを経て、2022年には部員総数は25人まで回復し、部費は決算時に繰越金が出るまでになり、トレーニング器具の導入も実現することができました。部活動では、人とのつながり、部で分かち合う喜び、資金繰りの大切さを学びました。「学業はインプット、部活動はアウトプット」と考え、学びを生かす場として有意義な時間を過ごすことができました。

二つ目は、人脈作りです。酪農学園大学への入学を決めたのも、全国から集まる学生が多いことにあります。部活動、ゼミ活動での関わりはもちろん、他大学の学生や、酪農学園大学や北海道大学の先生方に紹介していただいた酪農家さんとの交流も大切にしてきました。対面授業の際には、友人からその友人を紹介してもらい話す機会を設けてもらったこともありました。結果として、多くの方と意見を交換することができ、自己のスキルアップにつながりました。

卒業論文の概要

卒業論文のテーマは「労働災害削減に向けた取り組み」でした。業種別での休業4日以上の死傷災害の発生状況は、農業、水産業および畜産業を合わせると職業全体の2.5%を占めます。この2.5%は、第一次産業の就業者数が日本の就業者数の3.2%ほどであることを考えると、非常に高い値であることを意味します。そこで本研究では、労働災害削減に向けたアンケートの作成を試み、全国の酪農場視察の際に、労働災害削減に対する各酪農場の取組みを調べることを目的としました。アンケートの作成においては、専門機関を訪問し、労働災害の現状、改善策およびアンケート項目に関する具体的な内容についての指導を受けました。酪農場調査は、北海道から大分県まで全国14戸の酪農場で行いました。アンケートの結果としては、労働環境に対して興味関心はあるものの改善には至らない酪農場が多く認められました。詳しくは、酪農学園大学の図書館でご覧になれます。

牧場の概要

冠  名:BRF
所  在  地:北海道上川郡美瑛町
経営面積:70 ha
飼養頭数:ホルスタイン種 経産牛220頭、未経産牛260頭
     馬 12頭
出荷乳量:2,960t/年
牛  舎:つなぎ飼い、フリーストール
搾乳方式:パーラー(アブレスト)、パイプライン、ロボット2台 ※搾乳施設三つ
従  業  員:6名(家族3名、従業員3名)※家族は役員

牧場の歴史、特長、取り組みなど

浦牧場は、北海道の風光明媚ふうこうめいびなまち美瑛町に位置します。美瑛町は、ヨーロッパの農村風景に似た雄大な丘陵地帯が広がっており、その美しい眺めと安らぎを求めて国内外から多くの観光客が訪れます。この美しいまちで乳生産をはじめ、加工・販売までの6次産業を行っています。現在の代表は4代目の父で、経営の背景にはブリーダー経験や海外での実習経験があります。広い視野を持ちながら想いのこもった生産を行っている牧場です。また、共進会への参加や酪農教育ファームの取組みにも力を入れています。最近は、母を中心に11頭の馬を管理し、乗馬可能なレベルまでの調教に力を入れています。

就農後の目標

就農後の目標は大きく二つあります。

一つ目は、牧場内の労働環境を整備することです。酪農業界では、劣悪な環境での労働が早期リタイアと作業事故の引き金になっています。酪農業の持続的発展に向け、労働環境を整備することは、酪農従事者の目下の急務です。実際、就業者10万人当たりの死亡事故者数は、全産業の平均が年間1.3人であるのに対し、農業就業人口ベースでは年間16.7人と極めて多いことが農林水産省の調べで分かっています。このような現状を打破するため、週休二日制の導入や作業内容の効率化を図りたいと思っています。

二つ目は、ブランド事業の立ち上げです。近い将来、作業着ブランドを立ち上げ、“おしゃれな服を身にまとった酪農家”を目指したいと思っています。

最後に、浦牧場では実習生の受け入れを行っています。興味がある方は、私のインスタグラム(u_tom106)にご連絡下さい。同世代との意見交換もできればと思っています。

未来の酪農家紹介「ベイリッチランドファーム(北海道美瑛町)浦 十夢さん」

育成舎

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哺乳舎

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ロボット哺乳舎

未来の酪農家紹介「ベイリッチランドファーム(北海道美瑛町)浦 十夢さん」

家族と従業員

未来の酪農家紹介「ベイリッチランドファーム(北海道美瑛町)浦 十夢さん」

牧場で飼育する馬

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柔道部の活動にも力を入れた