ジャーナル・アイ

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高校未来の酪農家

理事長と酪農家出身学生の談話会を行いました

掲載日:2024.03.11

2023年11月末に髙島理事長と酪農家出身学生の談話会を行いました。

現在酪農を取り巻く環境は、牛乳・乳製品の消費低迷や飼料・肥料代、光熱費の高騰などさまざまな影響から厳しいものとなっています。しかし、酪農経営は土地条件(都道府県、農業地域類型など)や飼養頭数規模が非常に多様であり、これらの影響の程度は一律ではありません。

本学には、将来実家の牧場を継承することを目標に学ぶ酪農後継者の学生が多数在籍していますが、学生の実家の牧場が実際におかれている状況について役員や事務職員が耳にする機会はこれまでありませんでした。そこで今回、牧場経営の現状や牛乳消費の状況、牛乳消費拡大のアイデア、併せて酪農学園での学びについて学生と意見を交わすことを目的に談話会を開催しました。

酪農家出身学生として参加したのは、循環農学類3年の伊藤いとう麗央れおさん、佐々木ささき凛也りんやさん、城田しろた幸大ゆきひろさんで、3人は酪農学園大学附属とわの森三愛高校(以下、とわの森三愛高校)から酪農学園大学に進学しています。現在は揃って畜産衛生学研究室に所属しており、談話会には指導教員の菊教授も同席しました。

最初に理事長から自己紹介があり、学生は出身地やとわの森三愛高校・酪農学園大学に進学したきっかけを紹介した後、それぞれの実家の牧場について経営規模や歴史、取り組みなどを写真も交えながらプレゼンしました。

実家の牧場について

伊藤牧場(神奈川県平塚市)
 ・飼養頭数:経産牛40頭、未経産牛25頭
 ・出荷乳量:255.5t/年
 ・飼養方式:つなぎ飼い
 ・搾乳方式:パイプライン
 ・麗央さんは4代目
 ・「角笛会」という市内の若手酪農家グループに参加し、ジェラート屋への牛乳提供や幼稚園などへの訪問型体験牧場を実施

佐々木牧場(北海道別海町)
 ・飼養頭数:経産牛110頭、未経産牛90頭
 ・出荷乳量:1,100t/年
 ・飼養方式:つなぎ飼い
 ・搾乳方式:パイプライン
 ・凛也さんは5代目

城田牧場(長野県伊那市および南箕輪村)
 ・飼養頭数:経産牛56頭、未経産牛13頭、育成牛32頭
 ・出荷乳量:400t/年
 ・飼養方式:フリーストール(経産・未経産)、つなぎ飼い(育成牛)
 ・搾乳方式:タンデムパーラー
 ・幸大さんの父が脱サラ後、酪農ヘルパーを経て新規就農
 ・幸大さんは2代目

髙島理事長は学生の説明に熱心に聞き入り、現在の経営状況や牧場での取り組みの詳細について尋ねていました。

経営の現状について学生からは、「粗飼料の自家生産や、地域で出た稲わらを飼料にするなど輸入飼料に依存しない工夫をしている」「配合飼料だけでなく子牛用の粉ミルクも高騰しているため、管理方法やコスト削減の工夫がさらに必要になった」「電気料金の値上げに加えて、夏の暑さ対策のために例年以上に電気使用量が増えて支出が大幅に増えてしまっている」といった例が挙げられたほか、「規模拡大や利益を増やすことよりも、現状を維持することが難しい」「経営状況を考えると高校卒業後すぐに戻って働いた方が良かったが、親が進学させてくれたので期待に応えたい」「今が踏ん張りどころだと思っている」などの意見がありました。

プレゼンの中で、学生が牛に対して非常に親しみを持っている様子が伺えたことから、とわの森三愛高校時代の牛との関わり方ついて理事長から質問があり、学生からは「生徒が交代で毎日世話をしており、子牛の頃から大切に世話をしているため牛と信頼関係が築けているのだと思う」といった説明がありました。理事長からはさらに、高校での一番の学び、大学進学後の新鮮な学びについても質問がありました。

とわの森三愛高校での学びについて

城田さん
実家では自分のことを中心に考えて楽に作業することを優先していましたが、高校では牛をとても大切にしているので「牛を最優先にしなさい」と教わりました。自分のことだけ考えるのではなく、牛を第一に見て、その後にメンバーとコミュニケーションをとりながら作業をしないとだめだ、ということを学びました。

佐々木さん
私も実家で仕事を手伝っていましたが、エサをやるにしても掃除をするにしても単純に“作業”としか捉えていませんでした。しかし高校の実習で「牛のためにやっている作業なのだから、牛がどう感じるかをもっと考えなさい」と教わり、牛と人、どちらにとっても良い関係を考えるようになりました。

伊藤さん
“一つのやり方にこだわらない”ということを学びました。酪農家の数だけ考え方や作業の進め方があるので、「先生はこう教えたから必ずそのとおりにしなさい」とか「実家の方法はこうだからこの方法が良い」ではなく、「その牧場のやり方があるのだからそれに倣いなさい」と教わりました。いろいろな牛の飼い方があることを学べたと思います。

高校と大学の違い、大学での新鮮な学びについて

城田さん
高校時代は学ぶスキルが未熟でしたが、大学進学後に江別市内の酪農家さんでアルバイトを始めたときに「高校時代に座学と実習で得た知識はここで活かせるんだ」と初めて理解できたことがありました。大学では家畜行動学(循環農学類・森田教授)も学べるのですが、「本当にこういう行動をするんだ」と間近で観察できるようになったので、そういう時に勉強してきてよかったなと思います。

佐々木さん
大学では“その作業にどういう意味があるのか”を学べています。例えば、ディッピングにはどういう意味があるのかとか、飼料の配合をなぜその割合にするのか、なぜ濃厚飼料を与えすぎると良くないのか—など、作業の目的や理由をより詳しく見るという点が高校と違うところだと思います。
※搾乳前後に行う乳頭の殺菌

伊藤さん
高校では基礎的なことを学べました。例えば“牛は胃を四つ持っていて反芻する”といったことですが、大学ではより詳しく学べています。家畜行動学の授業で「牛が反芻してから再び飲み込むまでに咀嚼する回数は個体ごとに異なっている」と習ったのですが、実際に観察してみると、先生が「このタイミングで飲み込むから見ていて」と言った通りのタイミングで飲み込んだことがあり、印象的でした。搾乳や消毒に関しても、どのような菌が問題になるのか、消毒をするタイミングや方法というところまで深く学べています。

研究室での学びについても理事長から質問があり、3人は乳房炎の早期発見技術に興味があり、4年生の卒論研究の手伝いを通して実験技術の習得に取り組んでいるとの説明が菊教授からありました。

牛乳・乳製品の消費について(日頃の牛乳消費)

牛乳消費拡大のアイデアでは、季節や飼料によって風味が変わるという牛乳の特長を活かした商品ができないか-といった意見が出たほか、食育など地域社会と連携した取り組みの必要性や消費拡大の呼びかけを広く発信することの難しさについても意見が出されました。また自身の日頃の牛乳消費について学生から例が挙げられました。

佐々木
実家では祖母がバルクから持ってきた生乳を沸かしてくれて、それを毎朝飲んでいました。また、“牛乳豆腐”という、牛乳にお酢やレモンを入れて作るカッテージチーズに似たものをよく食べていました。一人暮らししている現在もコーヒーやココアにして飲んでいます。
※牧場で搾った生乳を貯蔵しておく冷蔵タンク。毎日または隔日で集乳車が回収して乳業工場へ運ぶ

伊藤
牛乳は昔からずっと飲んでいます。実家では、牧場で搾った生乳を使って祖母が牛乳寒天を作ってくれました。祖母は趣味で家庭菜園をしているので、そこで採れたイチゴを入れたりして、実家で採れたものを使ったデザートをよく作ってくれました。

城田
私の実家でも生乳を沸かして飲んでいました。スーパーなどで牛乳の価格を見ると高くて、消費者の方からすると手が出しにくいのかなと思いますし、一方で乳業メーカーはその価格でないと儲からないというのもわかりますが…私たちとしては、本当に牛乳はおいしいので飲んでいただきたいです。

【生乳の利用について】
牧場で搾ったままなにも処理されていないものを「生乳せいにゅう」といい、生乳を「牛乳(成分調整牛乳などを含む)」として流通させるためには、乳処理業の営業許可を受けた施設で加熱殺菌などの処理を経る必要があります。酪農家が自身の農場で生産した生乳を消費する「自家消費(飲用以外に子牛哺乳用や輸送などでの減耗分も含む)」は、法律などで明確に定義されたものではありませんが、営業行為には該当しないと考えられ禁止はされていません。ただし消費はあくまでも自己責任の範囲かつ家族のみであり、家庭で加熱処理をしたとしても「牛乳」として扱うことはできないため、有料・無料に関わらず知人や一般消費者に提供することはできません。

 

談話会は今回が初めての開催であり、参加した学生にとっては理事長と初めて対面する機会でもあったことから緊張している様子が見られましたが、実家の牧場や牛について話題になった際には、非常に生き生きとした表情で積極的に発言をしていました。各話題とも活発なやり取りがなされ、予定時刻を越えて談話会は無事終了しました。

理事長と酪農家出身学生の談話会を行いました

談話の様子

理事長と酪農家出身学生の談話会を行いました

実家の牧場を紹介

理事長と酪農家出身学生の談話会を行いました

伊藤麗央さん

理事長と酪農家出身学生の談話会を行いました

佐々木凛也さん

理事長と酪農家出身学生の談話会を行いました

城田幸大さん

理事長と酪農家出身学生の談話会を行いました

髙島理事長