「アニマルウェルフェア」って何ですか?
掲載日:2019.02.13
最近耳にすることが多くなったのですが、「アニマルウェルフェア」って何ですか?
“アニマル”は“動物”あるいは“家畜”、“ウェルフェア”は“福祉”と訳されることが多いことから、“家畜福祉”と日本語で示されることが多いようです。しかし、福祉には社会保障(福祉政策など)の意味があり、誤解を伴います。
アニマルウェルフェアは、生きている間の「動物の幸福」の追求です。動物は痛みや苦悩を感じることが明らかであり、そうした動物たちには身体的にも心理的にも健全な状態で、生活させようという、配慮に基づく考え方です。
アニマルウェルフェアの追及は、動物たちの生活の質(QOL:Quality of Life)の保証に関連しますから、生産された畜産物のブランド(認証)、つまり差別化された商品として販売されることがあります。オリンピックのような国際的行事では、アニマルウェルフェアに基づく飼育環境で飼われたことが保証された畜産物のみを食品として提供するという基準が設けられることもあります。経歴が明らかで、動物の生活環境に配慮した畜産であることを求める消費者が数多くいます。そうした消費者の求めに応じて、畜産業の形態は、日々、進化しています。
アニマルウェルフェアには、満たすべき5つの基準があります。この基準は、①飢えと渇きからの解放(餌を与えない・水を与えない状態にはしない)、②不快からの解放(寒すぎたり・暑すぎる環境を避ける)、③痛み損傷からの解放(不要な痛みや不必要な体の一部の除去を行わない)、④正常な行動を発現できる自由(動物本来の行動を発現できる環境を整える)、⑤恐怖や苦悩からの解放(恐れや困惑を伴う管理を避ける)とされています。
動物が感じている痛みや恐怖を理解するために、動物の行動や生理物質に関する研究が国内外で活発に行われています。
【回答者】
酪農学園大学 農食環境学群 循環農学類
教授 森田 茂