牛の体温が分娩前日に0.4~0.6℃低下するのはなぜですか?
掲載日:2021.04.26
『牛の繁殖生理 』で「分娩直前になると尾根部が急激にへこみ、分娩前日には体温が0.4~0.6℃低下します。したがって、分娩1週間前頃から夕方の決まった時間に体温を測定すると夜間の分娩にある程度備えることができます。」との記載がありました。
体温が0.4~0.6℃低下する生理的な機序を教えてください。
分娩前に体温が低下することは、多くの研究報告があります。
古くは1900年代初頭から報告があります。分娩前30時間頃から下がり、分娩後もしばらく体温が低い状態が続くとされます。私たちの日常的な分娩監視における体温測定においても、分娩1日前に0.4~0.7℃低下する牛が多く見られます。
私の認識の範囲では、分娩前に体温が低下するメカニズムについては、詳しく解明した論文はなく、いまだに分からない事が多いとされています。
一般的に「プロジェステロン濃度が低下すると体温が低下する」と言われています。分娩前40時間頃から黄体退行に伴いプロジェステロン濃度が低下します。反対にエストラジオール濃度とPGF2α濃度が上昇します。分娩前には子宮の血流量が減少し、熱の放出が減少することから、体温が低下するのではないかと考えられています。
しかし、分娩約1日前に体温が低下するという現象はよく知られているものの、その詳細で正確なメカニズムは今も完全に解明されているわけではありません。
【回答者】
酪農学園大学
学長 堂地 修