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衛生

飼養衛生管理基準改正後の重要点

掲載日:2022.02.16

酪農学園大学
副学長
 髙橋 俊彦

はじめに

家畜の所有者が衛生管理において守らなくてはいけない「飼養衛生管理基準」が、2020年(令和2年)に改正され、一部を除き2021年10月1日施行されました。
今回は、牛に関する主な改正点について解説いたします。

まず、基準を守るように規制が厳しくなりました!

飼養衛生管理基準の遵守に係る是正措置などの拡充について【2021年10月1日から施行・義務付け】
① 衛生管理区域に入る者にのみ、または汚染された畜舎・倉庫などから出る者にのみ課せられている消毒義務を、出入りする者すべてに課すよう措置。
② 家畜の所有者は、衛生管理区域ごとに、飼養衛生管理に係る責任者を選任する制度を創設。
③ まん延防止措置として、都道府県知事は、家畜の所有者に対し、飼養衛生管理基準の遵守について、指導・助言を経ないで緊急に勧告・命令できるよう措置。
④ 都道府県知事は、飼養衛生管理基準の遵守に係る命令違反者を公表できるよう措置するとともに、国は、都道府県における飼養衛生管理の状況などについて、積極的に公表できるよう措置。
⑤ 飼養衛生管理に関する罰則の強化 (遵守命令に従わなかったとき、100万円以下の罰金)。

改正点

項目1:家畜の所有者の責務
家畜の所有者は、飼養する家畜について、家畜の伝染性疾病の発生の予防およびまん延の防止に対する責任を有する。
● 関係法令を遵守すること。
● 関係者と協力して衛生管理の意識を高め、衛生管理を行うこと。
● 飼養衛生管理者を決め、この項の取組について確実に管理者に実施させること。
● 管理者が所有者と異なる場合にあっては、常時連絡がとれる体制を確保すること。

項目3:飼養衛生管理マニュアルの作成および従事者などへの周知徹底【2022年2月1日施行】
● 必要事項を規定した飼養衛生管理マニュアルを作成すること。
● マニュアルの作成にあたっては獣医師などの専門家の意見を反映させること。
● 従事者および外部事業者が当該マニュアルを遵守するよう、当該マニュアルを印字した冊子の配布、看板の設置そのほかの必要な措置を講じること。
● 家畜の伝染性疾病の発生の予防およびまん延の防止に関する情報を、従事者および外部事業者に周知徹底すること。

項目7:家畜伝染病の発生リスクの高まりに対する準備
大臣指定地域において講じなければならない措置(項目14、21)の内容を習熟していること。

※ 大臣指定地域:家畜伝染病の病原体が野生動物に感染したことが確認された場合に、確認された家畜伝染病の性質および同病に感染する動物の分布状況を総合的に検討し、家畜での発生リスクが高まっていると判断した場合に農林水産省告示で示す地域。当該地域に所在する農場はそのリスクの高まりに応じて追加的に防疫措置を講じる必要がある。現在の対象疾病は口蹄疫、豚熱(CSF)およびアフリカ豚熱(ASF)の3疾病(飼養衛生管理基準遵守指導の手引き)。

<項目14:ほかの畜産関係施設などに立ち入った者などが衛生管理区域に立ち入る際の措置>
当日にほかの畜産関係施設などまたは大臣指定地域に立ち入った者および過去一週間以内に海外から入国し、または帰国した者を衛生管理区域に立ち入らせないようにすること。
<項目21:安全な資材の利用>
大臣指定地域において収穫された農産物などを自ら飼料、敷料などに利用する場合は、家畜保健衛生所に助言を求め、指導に従うこと。

項目8:衛生管理区域の設定
衛生管理区域の考え方を明確化した。

項目9:放牧制限の準備【2021年10月1日施行】
放牧の停止または制限があった場合に備え、家畜を収容できる避難用設備の確保、または出荷・移動の準備をしておくこと。

項目11:愛玩動物の飼育禁止
衛生管理区域内で、犬・猫などの愛玩動物の持込みや飼育をしないこと。

項目16:衛生管理区域専用の衣服および靴の設置並びに使用
● 衛生管理区域専用の衣服および靴を設置し、立ち入る者にこれらを着用させること。
● 病原体の侵入を防ぐため、着脱前後の衣服および靴を、すのこ・分離板などで場所を離して保管すること。また、更衣前後の経路が交差しないよう、一方通行とするなど必要な措置を講じること。

項目17:衛生管理区域に立ち入る車両の消毒
車両の消毒はもちろん、衛生管理区域に車両を入れる者に対し、当該農場専用のフロアマットの使用あるいはマットの消毒そのほかの方法により、車内における交差汚染(病原菌の汚染度が高いものが汚染度の低いものに接触することによって広がる汚染)を防止するための措置を講じること。

項目24:畜舎の入口における靴の交換または消毒
● 畜舎ごとの専用の靴を設置し、畜舎に入る者に対し、これを着実に着用させる、または靴の消毒をさせること。
● 靴に排せつ物・汚泥などが付着した場合には、洗浄および消毒を行うこと。

項目29:ネズミ及び害虫の駆除
ネズミ、ハエなどの害虫の駆除を行うために殺鼠剤さっそざいおよび殺虫剤の散布、粘着シートの設置そのほかの必要な措置を講じること。

項目30:衛生管理区域内の整理整頓および消毒
● 衛生管理区域内は、ねずみなどの野生動物の隠れられる場所をなくす。
● 病原体が残存しないよう、不要な資材などの処分、除草などを行うとともに、資材、機材などを整理整頓し、敷地を定期的に消毒すること。

項目33:衛生管理区域から退出する者の手指消毒など

項目34:衛生管理区域から退出する車両の消毒

項目35:衛生管理区域から搬出する物品の消毒など
家畜の排せつ物などが付着または付着したおそれのある物品を持ち出す場合には、洗浄、消毒などの必要な措置を講じること。

おわりに

以上主な改正点について解説しました。
日頃の丁寧な衛生管理と、記録、責任者の存在が大きいと思います。衛生管理はすぐに手を抜くことができます。しかしここを大切にする農場は感染症や病気が起きにくく、健康な牛を飼育することができます。
大切な牛を健康に守るため、皆さんのチョットした気遣いと継続が大切です。

 

<参考文献>
農林水産省 飼養衛生管理基準について
https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_shiyou/index.html

飼養衛生管理基準改正後の重要点
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