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栄養・飼料

飼料作物の生産と調製―理論と実際― ≪第5回≫トウモロコシサイレージ調製の基本と実際

掲載日:2019.12.24

酪農学園大学
副学長
 野 英二

はじめに

トウモロコシは飼料作物の中で最も多くの収穫量が望める作物です。収穫適期では乾物中の子実割合は4~5割以上を占め、可消化養分総量(TDN)収量が高く、高エネルギー自給粗飼料として重要な作物です。高エネルギーで収穫量の多いトウモロコシの給与は、濃厚飼料給与量の低減にもつながります。また、トウモロコシは発酵基質の糖分が多く、サイレージ原料として最適の作物であり、その調製の基本技術は、牧草サイレージと同様です。今回はトウモロコシの栽培とそのサイレージ調製のポイントについて紹介します。

1.トウモロコシ栽培のポイント

(1)品種選定
トウモロコシの生育パターンは図1のとおりです。サイレージ用トウモロコシの収穫適期は黄熟期で、水分含量はおおむね70%です。これに到達するには積算温度が大きく影響します。トウモロコシの特性を最大に発揮させるには、その地域に適した品種を選ぶことが大切です。トウモロコシは生育期間が積算温度によって異なるため、地域に適した品種を選ぶことが最も重要です。つまり、積算温度の低い地域においては早生種を選定することになります。
トウモロコシの早晩性の表示に相対熟度(RM)があります。一般的には発芽から生理的成熟期に達するまでの日数で示されますが、トウモロコシの場合、必ずしもそれをそのままを表示したものではありません。しかし、早晩性の判断としては重要なものです。例えばトウモロコシの「75」「90」「100」あるいは「110日クラス」などと称される品種は、播種日から収穫日に至る日数を表しているのではなく、品種の早晩性を表しているものと理解してよいでしょう。単純積算温度が2,300℃以下の地域であれば80日クラス以下の早生種、110日クラスの晩生種は積算温度の高い地域に限られます(図2)。
収穫期には多少の余裕を持ち、黄熟期に達する品種を選定することや、収穫期の分散や気象変動からの危険分散から異なる品種を2~3品種栽培することも有効です。
トウモロコシは新品種の開発が進められているため、地域ごとに推奨されている品種を普及センターや種苗会社などと相談して栽培品種を決めるとよいでしょう。

(2)栽培の留意点
1)栽植密度
栽植密度はトウモロコシの生育に大きく影響します。密植は稈全体が軟弱、根系は貧弱となり、倒伏しやすく病害にかかりやすくなります。また、雌穂は小さく飼料価値が低下する原因になります。従って、適正な栽培密度を保つことが重要です。適正栽培本数は品種などによって異なりますが、10a当たりおおむね7,000~8,000本です。例えば、畦間70cm、株間20cmでの播種では、1,000㎡÷(0.7m×0.2m)=7,140本となります。
欠株は栽培密度が低下し、収量に大きく影響します。欠株の原因は①播種されていない②発芽が正常に行われない―などです。播種後または鎮圧後の覆土深は2~3cmが基準となりますが、砕土不十分な圃場で、さらに干ばつが重なると発芽不良が予測されます。この場合の覆土深は5cm程度にします。

2)雑草防除
雑草は収量と栄養価の低下を引き起こします。雑草防除の基本は初期防除です。トウモロコシは雑草が発生する前に散布する土壌処理と、初期生育時に散布する生育処理の除草剤があります。土壌処理は播種後~出芽前の雑草発生前に散布します。その後雑草が発生した場合には、生育処理を行います。生育処理は散布時期が遅れると除草効果が軽減し、雑草防除ができません。

3)適正な施肥
トウモロコシは肥料をたくさん吸収する作物で、肥料不足になると生育が止まって収量が減少するため、適正な施肥が重要です。施肥は各都道府県の施肥基準を参考に施用します。『北海道施肥ガイド』では、地帯(地域)、土壌区分ごとに窒素(N)、リン酸(P2O5)、カリ(K2O)の施用の基準量が示されています。おおむね10a当りN10~15kg、P2O515~20kg、K2O10~15kgです。
一般にトウモロコシ畑のように耕起する場合、牛ふん尿由来の堆肥やスラリーを投入した結果、窒素やカリの過剰施用が懸念されます。堆肥やスラリーの成分含量、施用量とその肥効率から化成肥料の施肥量を求める適正な施肥設計が重要です。ただし、肥効率の過大評価による養分不足に注意しなければなりません。

4)輪作体系
トウモロコシは連作を極端に嫌う作物ではありませんが、輪作体系を取ることが望まれます。輪作の効果はトウモロコシ自体よりも、ほかの作物(牧草)にとって有利なことが多くあります。例えば、トウモロコシでは更新牧草地の雑草抑制などの効果もあります。
連作障害の原因としては、土壌養分の欠乏・不均衡など土壌物理性の悪化が第一に挙げられます。連作は土壌の団粒構造を低下させるので、堆肥などの投入によって土壌物理性、化学性を改善する必要があります。

2.バンカーサイロでのサイレージ調製

(1)収穫期
トウモロコシはサイレージ用作物として優れていますが、サイレージに調製される過程で乾物の損失が生じます(図3)。主な乾物損失は、収穫時(圃場)、発酵、排汁による損失に大別されます。未熟なトウモロコシは水分含量が高く、発酵や排汁による損失が多くなります。写真1のように水分含量が75%前後のトウモロコシは、詰め込み作業時から排汁が生じ、栄養価の低下や発酵品質の低下が懸念されます。一方、水分含量が70%以下では発酵による損失が少なく、また排汁の損失はほとんど生じません。水分70%前後の熟期は黄熟期であり、この期はTDN収量が高く、乾物回収率、サイレージ調製の適水分であるのでトウモロコシの収穫適期となります。
トウモロコシの熟期は、子実を爪で押しつぶすなどして、その状況から判定されます。乳熟期は子実が柔らかく、子実をつぶすとミルク状の水様物が出ます。糊熟期は子実をつぶすと粘りのある糊状の液が出ます。また、デント系の品種は頂部表面がくぼみ始めます。黄熟期は子実の頂部表面がへこみ、爪を立てると子実が割れるか、やっと割れるほどに硬化します。更に熟期が進んだ完熟期では子実が硬くなり、全然爪が立たなくなります。
黄熟期をより確実に判定するには、雌穂の上位3分の1部分を折って“ミルクライン”を確認するのが有効な方法です。トウモロコシは熟期が進むと子実の上部から芯に向かって黄色く(でんぷん)なり、白色部分(乳汁)が少なくなってきます。この黄色と乳白色部分の境界がミルクラインであり、このラインが子実の中央に形成された時(ハーフミルクライン)が収穫適期の黄熟期です(写真2)。

(2)収穫作業
1)刈り取り高さ
トウモロコシは養分吸収量の多い作物であり、施用量が不足すると収量、栄養価の低下が生じます。一方、窒素の施用量が多くなると収量は増加しますが、硝酸態窒素も高まる傾向にあります。また、硝酸態窒素の蓄積は栽培密度や気象条件などにも影響されます。硝酸態窒素含量の高い飼料の給与は、乳牛へ悪い影響を与えかねません。硝酸態窒素は茎に多く分布するため、刈り取り高さを高めにすることも必要です。高刈りは収量の減収になりますが、消化性の低い部分を収穫しないことから消化率の向上にもなります。

2)クラッシャー(破砕)処理
登熟の進んだトウモロコシは未消化の子実が多くなりますが、消化性の向上を目的に子実や芯を破砕する方法が取られます。ハーベスタに装着したコーンクラッシャ(写真3)による破砕処理によって、①子実でんぷんの利用性の向上②芯や茎の破砕による嗜好しこう性の改善(選び食い防止と残飼の減少)③切断長を長くできるためトウモロコシの繊維効果が期待できる④サイレージの詰め込み密度が高まる―などの効果が得られます。黄熟期に収穫するトウモロコシの切断長は10mm前後ですが、破砕処理をする場合は15mm前後にするとよいでしょう。なお、糊熟期での破砕処理は排汁が発生しやすいため、破砕処理を行わないか、クラッシャのローラ間隙かんげきを最大にします。

(3)サイロの多様化
サイレージ調製に用いられる多くのサイロは塔型サイロやバンカーサイロですが、2000年以降に登場したチューブサイロや細断型ロールベーラの導入により、トウモロコシサイレージの調製法も多様化しています。

1)チューブバッグサイロ
 バンカーサイロの補完サイロとしてチューブバッグサイロの活用があります(写真4)。チューブバッグサイレージ調製は、専用の機械を用いて大口径のチューブバッグ内に圧力をかけながらトウモロコシを詰め込むシステムです。踏圧作業が不要であり、詰め込み作業は極めて短時間で行われ、材料の運搬やハーベスタの運転が追いつかないスピードです。ちなみに一般的なバンカーサイロ1基(約140t)に詰め込むのに最低2日間要しますが、チューブバッグは1日で110t程度のサイロ2本を調製することができます。

2)細断型ロールベーラ
従来の牧草ロールラップサイレージ調製法に準じた、細断型ロールベーラとラッピングマシーンを組み合わせたシステムにより、トウモロコシロールベールサイレージの調製と再貯蔵が可能になりました(写真5)。筆者は、細断型ロールベーラサイレージはチューブバッグやバンカーサイロと同品質のサイレージ調製が可能であることを確認しています。再貯蔵は、短期間の代替サイロとしての利用が可能です。また、細断型ロールベーラは、細切された牧草や発酵TMRの調製などにも応用されるシステムとしての有効活用が期待されます。

 

<参考文献>
名久井 忠(高野信雄・安宅一夫監修1986)サイレージバイブル-サイレージの調製技術-.酪農学園出版部.
名久井忠(内田仙二編集1999)サイレージ科学の進歩.デーリィ・ジャパン社.
名久井 忠(安宅一夫監修2012)最新サイレージバイブル-サイレージとTMRの調製と給与-.酪農学園大学エクステンションセンター.
野 英二(共著2004)サイレージ-より高品質なサイレージ、より乳牛が喰い込むサイレージ-.デーリィ・ジャパン社.
雪印種苗株式会社(2019)雪印の牧草・飼料作物カタログ(北海道版)2019.
戸澤英男(1981)トウモロコシの栽培技術.農山漁村文化協会.

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