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Q&A

胎生期に母牛から子牛に臍帯を通じて免疫をもらえない理由とはなんでしょうか?

掲載日:2022.08.05

Q

胎生期に母牛から子牛に臍帯を通じて免疫をもらえない理由とはなんでしょうか?
子牛は胎内で免疫をもらえないため、産まれたての子牛は病原性微生物に対する抵抗力はほとんどなく、良い初乳を飲ませることで疾病を予防する第一歩になることは理解したのですが、人間は胎生期に免疫をもらえる(与える)ので、なぜ子牛は人間と同様に胎生期に免疫をもらえないのか疑問に思いました。

A

理由となると、証明されていないように思います。
あくまで想像の域を出ませんが、免疫成分が胎盤移行しない動物の特徴としては、胎生末期において内臓だけでなく運動器までが胎外に出されても機能できる程度に成長しており、出生後直ちに立ち上がって動き回る動物(馬、牛、羊、豚など)と、出生直後に運動器が未成長で、成長するまである程度親が育成する動物(人、犬、猫、ウサギなど)の違いがあると思います。これについては胎盤の構造も影響しているかもしれません、母親の子宮と胎盤の距離が遠い動物が前者となり、母親との距離が遠いため胎盤を介して免疫因子の胎内移行ができず、初乳を介した短い時間での免疫成分の移行以外は自身での免疫システムの成長が主体になる、反対に胎内移行の多い動物は出生後に母親の育成の依存度が高くなると思います。その意味では人間は脳が著しく発達したものの、運動器は全くダメで最も母親の育児に依存して成長します。おそらくほかの動物に襲われる危険性の高い動物は、出生後から運動器が成獣並みに機能しなければ肉食獣の餌になるだけです、進化の過程でこのように選別されてきたのだと思います。


【回答者】
酪農学園大学 獣医学群 獣医学類
教授 大塚 浩通