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栄養・飼料

飼料作物の生産と調製―理論と実際― ≪第6回≫サイレージの品質評価法と好気的変敗

掲載日:2020.02.25

酪農学園大学
副学長
 野 英二

はじめに

サイレージの品質、栄養価は乳牛の飼料給与体系、乳生産、疾病に影響します。サイレージ発酵によって産生されるアンモニアや酪酸などは、嗜好しこう性やサイレージの栄養価の低下に伴う乾物摂取量の低下、乳量の減少、栄養不足からの疾病(エネルギー代謝障害)の発生原因になるため、給与の可否や給与法を判断する必要があります。サイレージは調製法によって発酵様相が異なります(表1)。その発酵様相から飼料価値を判断する指標が“発酵品質”です。従って、サイレージの発酵品質の良否を的確に判断することが求められます。発酵品質の評価方法としては、化学分析によるものと現場で用いられる官能評価法があります。

1.分析値による評価

サイレージの発酵品質の分析項目は、サイレージの発酵様式を示すpH、乳酸、揮発性脂肪酸(VFA:プロピオン酸、酢酸、酪酸など)、アンモニアなどがあります。特に、サイレージの品質に大きく影響する指標物質から評価する方法としてⅤスコアがあります(表2)。

(1)pHと乳酸含量
良質サイレージ調製の基本原則は、サイロ内の嫌気性の保持とサイレージのpHを低くすること、あるいは原料草を予乾することで品質に悪影響を及ぼす微生物の活動を抑制することです。これらから、サイレージ発酵のおおよそのパターンを推察することができます。
高水分(水分70%以上)の原料草による乳酸発酵型のサイレージは、乳酸含量が高くなり、その結果pHが低くなります。つまり乳酸含量とpHは負の相関にあります。トウモロコシサイレージは発酵基質の可溶性炭水化物(WSC)含量が高く、典型的な乳酸発酵型サイレージです。ギ酸などの酸添加サイレージは、pHを低くし、不良微生物の生育を抑制することが目的であるため、サイレージ発酵自体が抑制されます。そのため、pHが低く、乳酸含量も低いサイレージとなります。これらのサイレージのpHは4.2以下が「良」となります。
一方、予乾などによって低水分化したサイレージは、発酵を抑制する調製法のため、水分含量が少ないほど乳酸の生成量は少なく、pHは高い傾向にあります。このようなサイレージのpHと乳酸含量は、品質評価の指標にはなりません。

(2)揮発性脂肪酸(VFA)
サイレージ発酵で産生する有機酸は、乳酸のほかプロピオン酸、酢酸、酪酸などの VFAがあります。プロピオン酸の生成量は一般にわずかであり、多くの場合酢酸量と合算して表示されます。
酢酸の生成は、好気性細菌やヘテロ乳酸発酵によるところが多く、ほとんどのサイレージでは多少にかかわらず検出されます。酢酸含量の多いサイレージは、詰め込み時間(好気的条件下)の長いものやヘテロ乳酸菌主体の発酵のサイレージであると考えられます。
酪酸は、クロストリジウム(酪酸菌)による酪酸発酵によって生成します。また、酪酸菌は、タンパク質を分解してアンモニアも産生します。酪酸の含量は、酪酸発酵の度合いを示すもので、その生成はサイレージの重要な品質指標となります。ちなみに良質サイレージは0.1%以下、劣質サイレージは0.4%以上です。

(3)アンモニア態窒素(揮発性塩基態窒素:VBN)
アンモニア態窒素は、サイレージ水抽出液をアルカリ状態で発生するアンモニアガスを定量することから揮発性塩基態窒素(VBN)と称しています。サイレージ中のVBNのほとんどはアンモニアであるため、VBNとアンモニア態窒素は同義的に用いられています。
タンパク質の最終分解産物はアンモニアになるため、タンパク質の分解度合いとして、全窒素(T-N)に対するアンモニア態窒素の割合(VBN/T-N)として表示されています。アンモニアの生成が同量であっても粗タンパク質(CP=N×6.25)含量の高いサイレージは低く、CPが低いものは高く表示されることを考慮しなければなりません。アンモニアはルーメン内分解性タンパク質、さらにそれに包含される可溶性CPに画分されるため、CP含量とVBN/T-Nの高いサイレージの給与法には注意する必要があります。
VBN/T-Nの基準値はおおむね10%であり、低いほど良質サイレージです。

(4)Vスコア
サイレージの品質評価法として、品質に大きく影響する発酵生成物質のVBNとVFA含量から評価するVスコアがあります(表3)。これはサイレージの発酵様相にかかわりなく、すべてのサイレージに用いられる総合評価法です。
VBN/T-Nは5%以下が50(Y)、酢酸(プロピオン酸の合計)含量は0.2%以下が10(Y)、酪酸は0%で40(Y)の合計100ポイントが満点で、それぞれ含量に対応した計算式を用いてポイントを求めます。
評点は相対的評価であり、品質の基準として80点以上で「良」、60~80点で「可」、60点以下で「不良」としています。

2.官能評価

分析によるサイレージ品質評価は時間がかかりますが、現場では即座に発酵品質の良否を判断することが求められます。現場での品質評価は、色沢、におい、触感などから判定する簡易な官能評価法が有効です (表4)。
サイレージの官能評価の実際は、以下のようにするとよいでしょう。
1)サイロ全体を見てサイレージの色、カビの発生等を観察する。
2)サイレージをすくい上げ、においを嗅ぐ。また、手触り感を確認する。
3)サイレージを払って手の付着具合を確認する。
4)手に付着したサイレージの残臭を確認する。
良質なサイレージのにおいは、芳香性の甘い酸臭がします。劣質なものは不快臭がします。アンモニアやVFAは、臭いを発する成分(揮発性成分)であるため、サイレージのにおいの原因物質となります。特にアンモニアと酪酸は不快臭物質であり、その含量はサイレージの悪臭の度合いと合致します。
良質なサイレージの触感は、さらっとした清潔感があり、握った後でも手にこびりつかず、かつにおいが残りません。粘性があり、べとつき感のあるものは劣質です。色はオリーブ色(黄緑色)が良質、褐色が濃くなると劣質です。
発酵品質とVスコアとの関係では、等級A・Bは60点以上、給与に注意を要するサイレージ(C)また不向きなもの(D)は40点以下です。

3.好気的変敗

サイレージ貯蔵中、また開封後の好気的条件下の変敗によってカビが発生することがあります。このような現象を好気的変敗と称しています。

(1)好気的変敗のメカニズム
サイレージの好気的変敗は、酵母や糸状菌(カビ)の活動によるものです。サイレージの好気的変敗に関与する酵母や糸状菌は、開封後に侵入したものではなく、もともとサイレージに付着、生存しているものであり、サイレージ貯蔵中、また開封後の好気的条件下で活動するものです。酵母はサイレージ中の糖や乳酸を利用するため、pHが上昇し、また、発熱をもたらします。その後、増殖速度の遅い糸状菌が増殖し、好気的変敗が持続されます。好気的変敗の過程は、①サイレージが空気に曝される②酵母が活動する③サイレージが発熱する④乳酸が分解され、サイレージのpHが上昇する⑤カビや好気性菌が活動し、変敗が進行する―です。
酵母やカビの発生の前兆としてサイレージの温度上昇があります。サイレージの温度が38~40℃以上に高くなったり、飼槽でTMR(混合飼料)が発熱したりする場合は、サイレージの好気的変敗兆候の指標となります。日頃からサイレージの温度測定などの観察が必要になります。

(2)原因と影響
好気的変敗は、表面積の広いバンカーサイロにおいてその発生が多くなります。また、トウモロコシサイレージや低水分サイレージで変敗が生じやすくなります。その原因は、①サイレージ調製時の原材料の低水分化などによる踏圧不足②サイレージ中の糖含量が高い③給与時のサイレージ取り出し量が少ない―などが挙げられます(表5)。また、気温の上昇は微生物の活動を刺激し、好気的変敗を起こしやすくさせます。さらに、サイレージ中に糖が残存すると酵母が活動しやすくなります。このようなことから、トウモロコシサイレージは好気的変敗を起こしやすい傾向にあります。
好気的変敗で発生したカビには、乳牛に有毒なカビ毒(マイコトキシン)を産生するものがあります。カビ毒は飼料摂取量の低下、乳量の低下、繁殖障害、肝機能の低下など、深刻な状況を引き起こす原因になります(表6)。
良質サイレージは好気的変敗を起こしやすいといわれていました。しかし真の良質サイレージは好気的変敗を起こしにくいものであり、良質サイレージ調製のためには、その基本を厳守しなければなりません。    (おわり)

 

<参考文献>
安宅一夫・野 英二(高野信雄・安宅一夫監修1986)サイレージバイブル~サイレージ品質の見分け方~.酪農学園出版部.
自給飼料品質評価研究会編(1994)粗飼料の品質評価ガイドブック.日本草地協会.
Limin Kung(安宅一夫監修2012)最新サイレージバイブル-サイレージとTMRの調製と給与-.酪農学園大学エクステンションセンター.
野 英二(安宅一夫監修2012)最新サイレージバイブル~サイレージの見分け方~.酪農学園大学エクステンションセンター.
農林水産省農林水産技術会議事務局編(2006)日本飼養標準乳牛2006年版.中央畜産会.

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